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History

天橋立と智恩寺

幽玄の地に創られし文殊信仰の聖地

天橋山智恩寺てんきょうざんちおんじは、日本三景の一つ『天橋立』と隣り合う景勝地にあり、古来より文殊信仰の聖地として『日本三文殊第一霊場』として広く知られております。
この地の伝承やその地形から『九世戸の文殊くぜとのもんじゅ』『切戸の文殊きれとのもんじゅ』などとも呼ばれ、人々に親しまれてきました。
その起源は古く神代にまで遡ると伝わりますが、醍醐天皇だいごてんのうより『天橋山智恩寺』の号を賜った延喜えんぎ四年(904年)を一応の創建年次としております。
近代まで天橋立を寺領の一部とし、天橋立を中心とした一大宗教的空間であるこの地においても別格の存在であり続けております。
雪舟の国宝『天橋立図あまのはしだてず』(1500年頃)にも描かれ、その中には現存する多宝塔や石仏の姿を確認することができます。
江戸時代、丹後地方出身の傑僧・別源宗調べつげんそうちょう禅師ぜんじを中興開山として迎え、以降は臨済宗妙心寺派りんざいしゅうみょうしんじはに属する禅寺となりました。
智恩寺三門に掲げられた『海上禅叢かいじょうぜんそう』の扁額は海上にそびえる禅の道場を意味しており、古来より俗界と隔絶された幽玄の地であったことがわかります。

九世戸縁起くぜとえんぎ

丹後に伝わる天橋立の創造伝説

その昔、神々が日本の島々を造られていた頃、
この地はあらうみの神(龍神)に占領され
人の住まうことができませんでした。

そこで、神々がご相談なされ、
中国の五台山より智恵第一の仏である
文殊菩薩をお招きすることとなりました。

文殊菩薩はこの地で千年間もの間説法をされ、
龍神をことごとく改心させ
人々を護る善神へと導かれたそうです。

その後、神々は文殊菩薩の持たれる
如意に乗って海へ降りられ、
その如意が浮かんだものを天の浮橋うきはしといい、
ここに龍神が一夜にして
土を置き天橋立となりました。

こうして天神七代、地神二代の
あわせて九代によりできたこの地を
九世戸くぜとと名付けたということです。

天橋立の生成と文殊信仰の関係が説話的に述べられ、そこから智恩寺の創建までを説いた縁起書です。
当地にはこの九世戸縁起にまつわる地名が残されております。
文殊菩薩が獅子に載り上陸された“獅子崎しいざき”や説法の経本が置かれた“経ヶ岬きょうがみさき”など、訪ねてみるのも面白いかもしれません。

文殊信仰

騎獅文殊菩薩坐像

智恵第一の仏 文殊菩薩

『三人寄れば文殊の智恵』でなじみ深い文殊菩薩。正式には『文殊師利菩薩もんじゅしりぼさつ』とお呼びいたします。
智恩寺の文殊信仰は『九世戸縁起』に由来し、古来多くの人々の崇敬を集めてまいりました。今も文殊堂には、学問をはじめ和歌や武芸の向上を願った多くの絵馬やがくが掲げられております。
しかし、文殊菩薩の智恵の功徳力くどくりきとは、学問成就や合格祈願など自己の能力向上に限ったものではありません。物事や世の中の在り方を真に正しく見極め、一切衆生を益する願いを持ち続けることこそ文殊菩薩の本願功徳力であります。
そのためには、一切を空と悟って煩悩の種となる執着心を自ら断ち切り(智恵)、他者を救おうと願う心を起こすこと(慈悲)が必要です。
文殊菩薩は智恵と慈悲の両方を合わせもって、今も私たちを導こうと願われているのです。
※通常、文殊菩薩は秘仏です。年に5日のみ御開帳が行われます。詳細は「年中行事」をご確認ください。

年中行事を見る

十日恵比寿とおかえびす

一年の福徳円満を願う御縁日

例年1月10日は初恵比寿の縁日であり、特に商売繁盛・厄除開運等を祈願する多くの参拝客で賑わいます。
1月9日の宵恵比寿に始まり1月10日の十日恵比寿、翌11日の後恵比寿までの三日間は智恩寺が最も活気づく新年の風物詩です。
9日の宵恵比寿から文殊堂の御開帳が始まり、同時に各種御祈祷の受付や福棒の授与もなされます。
また、新年の縁起物である熊手や福笹などを買い求める方々も京都府内外から訪れます。
※御祈祷の申込はHP上に詳細がございます。

ご祈祷について

出船祭でふねまつり

夜の海にきらびやかに舞う伝説の龍神

九世戸縁起に由来する文殊菩薩の例大祭。
当日は文殊菩薩の御開帳がなされ、夕刻の奉納舞に始まり大勢の僧侶による読経(文殊会もんじゅえ)が厳修されます。また、当地繁栄会による海上絵巻(龍舞りゅうまい)や海上花火が行われ夏の夜空を彩ります。

はなまつり(降誕会ごうたんえ

お釈迦様の御誕生を祝う春のお祭り

仏教の開祖であるお釈迦様の御誕生をお祝いし、旧暦にならい5月の第2日曜日に行われる大切な行事です。
当日は文殊堂の外陣げじんに特別に花御堂はなみどう御誕生佛ごたんじょうぶつがお祀りされ、住職による読経や智恩寺御詠歌部による奉詠ほうえいがなされます。
美しい花々で飾られた花御堂に加え、お釈迦様の御誕生に由来する甘茶の接待もおこなわれるなど、あたたかな春の雰囲気を感じる一日となります。